●━ Fortune Cafe Magazine ━━━━━━━━━ No.3 [2001/04/19/Thu.] ━●
占いカフェ 〜あらたちゃんの占い教えてあげる☆〜
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■占い師さんのおたわごと■
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[1]健康オタク
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「私は死にますか?」
うっすらと額に脂汗を浮かべ、薄くなり始めた頭を、残っている髪で
渦巻き状に隠している作業員風の男性は、紙袋を抱いてドアのところに
立っていました。
(『死にますか』って、人間、そりゃあんた、いつかは死ぬでしょう…)
(その前に、こんな人でも占いに来るんだ)
今まで出張で占い師をしていたとはいえ、定住で、ブースまで与えられて
やる占い師の栄えある第1号の客が、開口一番「死にますか?」で、しかも
おっさんで、更に、うだつが上がらない感じ(あ、これは言い過ぎか、ごめ
んなさい)で、とにかく私にとってトリプル先制パンチで、ショックを受け
ているにもかかわらず、私の口から出た言葉は意外にも、
「落ち着いて下さい。さぁ、どうぞ、おかけ下さい」
だったのです。
自分でもビックリしました。(笑)
私のいるこの占いサロンの手順として、まずはじめにお客様に住所・氏名・
生年月日を『鑑定票』に書いてもらうんですが、それを見ると、このおじさ
んは五十二歳。
今は定年退職して、悠悠自適の隠居生活なんだとか。
それでお悩みを聞くと、なんでも自分は今にも死にそうな大病を患ってい
るらしく、病院に行ったが、もらった薬が合うのかどうかが心配で、それも
飲めず、どんどん弱っていっているとのこと。
(うそーん!)
だって、見たところ、年を重ねた人に出るシミや、肌の黒ずみは出ている
ものの、どう見ても健康そのもの。
しいて言えば、上の前歯二本が無いため、どうも『志村けんの変なおじさ
ん』に見えて、真正面で、真剣に話を聞く私は、笑いをこらえるのが必死…
というくらい。
おじさんは胸ポケットから、おもむろに病院でもらってきた薬を取り出す
と、テーブルに並べ、
「この薬が私に合うかどうかの相性を占って下さい」
と、きたもんだ。
これでも十数年占い師をやっていますが、薬との相性を占ってくれと言わ
れたのは初めて。
困ったなぁ…と思いつつ、よくよく見ると、それは私が風邪の時病院で
処方された事のある風邪薬と、タンきりと、咳止めのよう。
「これ、風邪薬じゃありませんか?」
と尋ねると、おじさんの顔がパッと輝き、こちらを見つめ返してきた。
「やっぱり、占い師さんは言われなくても分かるんですかねぇ」
(違うっつーの!)
感心するようにうっとりと眺めてくるおじさんの視線を振り払う様にブン
ブンと首を振り、私は自分も病弱なのでしょっちゅう病院に行く事、この薬
も過去処方された事を話した。
するとおじさんは、醒めるどころか、『同じ境遇の仲間発見!』という目
になり、ますます喜びモードのオーラを発してくる。
ホント『おいおい…』である。
とにかく、なぜ医師が処方した薬なのに飲まないのか、そして、どうして
自分が大病だと思うのかを尋ねてみた。
おじさんは、日時を細かく織り交ぜつつ話し出した。
ちょっと前に、病気になり病院へ行き、もらった薬を飲むと、急にそれか
ら尿が出なくなってしまったらしいのだ。おじさんは水分が抜けない事で、
体がだるくなり、恐くなって、その薬を一時止めてみたら、ちゃんと尿が
出始めたと言うのだ。それ以来、医師も、そして病院で処方された薬も信用
できなくなり、今に至っているのだそうだ。
しかしここで、矛盾が生じる。
医師が信用できないのに、なぜに今回、医師が処方した風邪薬を持ってい
るのか…ということだ。
だが、その理由はおじさんの手にしている分厚いシステム手帳を覗き見て
合点がいった。
このおじさん、どうやら『病気依存症』(そんな言葉があるか知らないけ
ど)なのだ。
『健康オタク』がいきすぎちゃうと、ちょっとしたことで『自分は病気な
んじゃないか?』って思うアレである。
このところTVでも健康を取り上げた番組は多い。そして、それらの番組
のチェック項目に少しでも引っかかると、『病気では…』とか『即、死ぬか
も…』とか思ってしまうのだ。
おじさんの手帳の中にもちゃんと『発掘!あるある大事典』や『ためして
ガッテン』などのある日の書き込みで、自分がチェック項目に引っかかった
事などが、細かい字で記入されていた。
おそらくはこうである。
TVを見ていて、健康チェックに引っかかる。すると、自分が病気の前兆
であると思うおじさんは、ひとまず近くの病院へ行き、それなりに薬を処方
してもらうが、過去のトラウマでそれは飲めない。 こうなると、良くなる
方法が無いわけなので、自分は近い将来死ぬに違いない。それは困ったとい
うわけで、思い余って占いサロンに飛びこんだ…と言うわけだ。
そこまで心配するならば…と手相を見たが、胃が多少荒れているらしいと
いう程度。
これもきっと精神的ストレスによるものに違いない。
そう告げても、おじさんは満足ではない様子。
大病でないと満足できないのだろう。
しかし、「なんでもないものは、なんでもない」と言うしかない。
困った私は、苦肉の策に出た。
おじさんは、西洋医学と抗生物質に異常なほど嫌悪感を持っているような
ので、「東洋医学、つまりは漢方などにこれからは変えてみてはどうか」と
提案した。
はっきり言って子供騙しのような手である。
がしかし、
「そうか!そうですね。漢方にします」
返ってきたおじさんの明るい声に、私はつい、
「はぁ?」
と、驚きの声を上げたほどである。
考え過ぎで視野狭窄していたのだろうか。
おじさんの表情は『目からウロコ』を絵に描いたように晴々としていた。
人とは分からないものである。
私はモノはついでと言う事で、健康のツボなども二、三伝授した。
叔父さんは前歯の無い口元に笑みを浮かべると、再び紙袋を前に抱え、
何度も私にペコペコとおじぎをしながら、ブースを出て行った。
(変な客だった…)
今のおじさんが立ち去ったドアを眺めつつ、私はハッとした。
出て行くおじさんに向かって、私はこう言ってしまったのだ。
「それでは、お大事に…」
と…
これじゃあ、占い師じゃなくて、病院じゃないかーっ!
これが私の第一号のお客様だったのである。
トホホ…
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■お知らせ■
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来週は「ナースのお仕事」の予定です。
次号[占いカフェ☆マガジン]の配信は日曜日です。
「今週の運勢」をお届けします。
・・・お楽しみに!
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